「……コンバンハ。カナコちゃん。今、何時かわかってる?」

ボクの問いにカナコは、ポケットから携帯を取り出して、今の時間を確かめる。


「おぉう! 10時すぎだよシノブ君!」

目を見開いて驚きの表情を僕に見せた。

「…カナコ……一人暮らしなら僕は何も言わないけど、親と暮らしてるでしょ君は?」


彼女が夜にボクの家に来る事など、1年と半年も付き合っていればスグにわかる。

ボクは、目を細めて彼女を見下ろす。175センチのボクが見下ろせるほどカナコは小さい。
153センチの身長はボクにはピッタリだと思う。

そんなボクに見下ろされたカナコは、言葉を詰まらせて視線を泳がす。


「だって…ママが…。友達と家で遊んでたら『無断外泊するな!』って怒ったんだよ…」

「…それは、カナコがワルいだろ? ったく…」

ショボーンと落ち込んでるカナコは、両手でスカートを握り締めて玄関先で目に涙をためて仁王立ちしている。