「この子、女の子が好きなの。もしかしたらあなたに痴漢したのがこの子かもって思って…」



…確かに、このおばさんが持っている犬の位置が彼女の腰あたりだ…。


すると、チワワが女の子の袖に鼻を擦り付けている…。

「…ぁ……」


湯気が出るぐらい顔を赤らめて、言葉をなくしてしまったらしい彼女は、少し狼狽していた。



『次は○○~。○○~』

「ねぇ、急いでるの?」


「…へ?」

とっさに声をかけた言葉って、ナンパじゃないの? って、言われても仕方なかった。


けど、これ以上注目を浴びている僕らはここで目的駅までいれる訳でもなくて…。簡単に言えば、この場から立ち去りたいって言うのが本音だった。



「晒し者になりたいんならいいけど」



そう言うと、彼女は顔を真っ赤にしながら…首が転がり落ちるんじゃないかって言うぐらい縦に振って同意してくれた。


「ぁ、のご迷惑おかけしました…」



小さくチワワの飼い主に、そう言ってちょうど駅に辿り着いたのを見計らって、二人でホームに下りた。