「カナコ、結婚しない?」
「………………へ…?」
突然のシノブ君の言葉に私はただただビックリするしかなくて…。思わず顔を下に向ける。
…そこには、シノブ君が私の手を握り締めたままで…、その手には、銀色に光るものが…。
「シ、シノブ君…。これ…これって、さっきの言葉…」
頭の中が真っ白になって、自分で何を言っているのか分かっていなくて…、シノブ君に何と言って返せばいいのか分からなくなくって…訳が分からないまま私の目からは涙がいつの間にか溢れて、頬に流れ落ちていた。
「……イヤだった?」
シノブ君の言葉にようやく動き出した思考回路をフルに動かして、首が痛くなるぐらい横に振って、イヤじゃない事をアピールした。
「違う…。ビックリしたの。でも、イヤじゃない…。その逆で、驚いて…。で、でも何で…?」
「…カナコって、何か波に乗ると僕を置いて先に行っちゃいそうだし、何より一度躓いたらしばらくグチグチ、落ち込むだろう? その時、僕が側にいたいんだ。カナコが先に行ったら、僕が少しずつでも追いついていくように頑張ると思うんだ。もちろん、脱落する事だってあるよ? そんな時でもカナコだったら、呆れながらでも僕を見てくれるだろう?」
一つため息を吐くシノブ君。
私は、シノブ君の言葉を一つ一つ聞き逃さないように聞く。
たった一度の、プロポーズ。