「シノブ君? 私ね。シノブ君と出逢えて良かったって思ってる」
「うん、僕もそう思ってる…。……まぁ、出逢いは最悪って言うか、インパクト大と言うか…」

「…確かに…」


あの時の事を思い出すと気まずいと言うか…恥ずかしいというか…。あまり、語りたくない思い出なのは私もシノブ君も同様で…。

二人の間では話題に出ないのが暗黙の了解になっている。

でも、私たちは…二人して肩を震わせて笑い出した。


「好き…。シノブ君が、世界中で一番好きだよ…」
「僕も。……カナコ、手出して。左手だよ」

言われて、とっさに出したのは右手だったから、シノブ君が私の耳元でクスクス笑いながら左手を催促した。

言われるがまま、左手を出すと私をシノブ君の方に引き寄せられて…キス、されちゃった…。



…な、長くない? って、長いよ!!

公衆の面前でこんな長いキスするなんて…。



「…ぅん…んん…、シノ、ブ…君…」


ようやく離れた唇は、ほんの少しだけ寂しいものを覚えながらシノブ君の顔を見ると悪戯っ子のように笑う彼に頭の中で「?」マークが駆け巡る。