「ダイスケッ…、カナコは!?」

ダイスケを少し睨み付けると、奴は身を引いて中へ入ると…香水なのか甘い匂いとか、化粧品売り場のような匂いもする部屋の片隅にカナコがいた。

黒いワンピースを着て、フリフリのエプロンをつけて…本当にメイドさんのようだった。

それよりも何よりも、僕がここに辿り着くまで…カナコが悲痛な声で電話をしていた時からダイスケが側にいた事が気に食わない。


「………カナコ…?」
「ッ…シ、ノブ…君…」


目を真っ赤にして、僕を見つめる。
始めて見るカナコのバイトの姿に僕は少し違和感を感じてしまった。


「カナコ? 何不安になってるんだよ…」
「……怖、いの…」


細い肩を震わせて、大粒の涙を零して僕の上着の袖を掴んだ。
その姿が留守電に入っていた声とダブってしまい、カナコを抱きしめた。