こんな優しく…でも、どこか力強く私を抱きしめられたら勘違いしちゃいそう…。
こんなに優しく囁かれたら…私の恋心にもっと火をつけちゃうよ…?
「もういいよ。カナコ…、ありがとう…」
「…ぇ?」
突然、感謝の言葉に私は当惑した。
だって、シノブ君を騙してたんだよ? 何で、お礼言われちゃうの?
訳が分からないまま黙っていると、ゆっくりとシノブ君が話し出す。
「最初、すごくカナコを疑った。二股かけられてるんじゃないのかって…。僕の家って、母子家庭だろう? 嫌だったのかなって…そう思ってた」
「そんな、事ないよ!」
抱きしめられたままの事に今更ながら、ちょっと恥ずかしいと思っていたけど、このまま離れたくないと思っていた時に、シノブ君の言葉に私は必死に否定をする。
確かにシノブ君は母子家庭で育ってるけど、そんなの考えた事がない!
そんな事で、人と付き合った事なんて一度もないのに…。