「おめでとうございます」
役所でそう言われたのはつい先ほど
こちら側の緊張感などつゆ知らず、あっさりと受理されたそれに俺たちは多少なりとも動揺を覚えた
それから「まぁ、こんなもんか」ときょとんとしている翼を連れ自宅に帰ってきた
「じゃあな、翼ちゃんまた明日ね」
「ばいばい」
幸弘と駐車場でわかれて部屋に行くと中には既に買い置きしておいた食材がある
記念日になるのだからどこかレストランでもと思ったのだが、人があまり得意ではない彼女を外に連れ出すのもいかがなものと思い
結果、こうしていつものように家で作ることになったのだ
「着替えておいで、そしたら一緒に夕飯作ろう」
「うん!」
パタパタとスリッパを鳴らしながら自室に入っていく翼は後ろ姿すらも可愛い
俺もネクタイを緩め解くとスーツを脱ぎ捨てさっさと部屋着に着替える
リビングに行くと既に部屋着のワンピースを身につけた彼女がクロッキー帳を見ている
「どうした?何かあったのか」
「…あのね、前に描いたやつ、出してなくて」
「ああ、それなら俺に渡してくれればいいよ。出来たら書斎に持ってきてくれる?」
「分かった」
家で仕事の話をするのも普通になってきた今日この頃だが、それはダメだと前にどこかテレビ番組で言っていた
なるべく家庭では家庭の話をするようにしよう