直ぐに準備を終え、楽しそうに駆け寄って来た彼女の手を取り、さり気なく額に唇を寄せれば笑顔が咲く


仰々しい社長室を出て直ぐに来たエレベーターに乗り込むと、エスパーこと幸弘がいた


「何してんだ幸弘、エスパーか?」

「ちげーよ、専属秘書が役所まで送ってやるんだよ」



実は昼に接待を受け、酒を飲んでいた俺はタクシーでも呼ぼうかと丁度思っていたところだった



「さすがは敏腕秘書様、タイミングが最高だな。宜しく頼むよ」

「どうせその後は愛の巣で優雅にディナーだろ、家まで代行してやるよ」

「スケジュール把握は完璧な上に予測まで当たるとな」

「当たり前だろ、翼ちゃんの為なんだから」



1階に着いたことを知らせる音と共に先に車を出して来ると前を歩いて行く幸弘


俺がこうしてまた翼と運命的に再会できたことも幸弘がいてくれたからだ

いつかあいつにも愛おしいと思える人が現れてくれたら、そう思う



「慎…?行かないの?」

「ああ、行くよ。扉気をつけてな」

「はーい」