「 菜緒さん 」





もうすぐで喫茶店だ、という所で、
腕を掴まれて、立ち止まった。
転びそうになったあたしを
包み込むようにして支えながら
”大丈夫ですか?”と彼は苦笑混じりに言った。





「 ・・・か、えで・・くん? 」


「 買出しの帰りなんですけど、
  今、あっちの喫茶店から
  出てきませんでした? 」





天然で、運動なんて全然できなさそうなのに、
あたしを抱きとめた腕は逞しい。





”ギャップ”っていうやつなのか、と
お礼を言って離してもらうと
彼はもう一度同じことを聞いてきた。





「 友達の行き着けの喫茶店だったので・・ 」


「 ・・・友達? 」


「 見えませんでしたか?少し小さい
  髪の長い女の子 」