「 菜緒さん、これ前に
  言ってたやつなんですけど・・ 」


「 あっ!あたしも持って来ました 」





栗色の髪を揺らして、彼はあたしの
前に立って本を出す。
つい最近まで他人だったあたし達は
数日で仲良くなっていた。





お互いの本の趣味が似ていて
持っている本を貸し借りしたり、
そんな毎日だった。





「 そういえば、楓くん 」


「 ん?なんですか? 」


「 最近公開された映画、知ってる? 」


「 あぁ、本が実写化されたやつですか? 」





”楓くん”
彼を名前で呼ぶこともすっかり慣れて、
だけど毎日こうして並んで歩くときは
あたしの心臓は壊れそうなくらいに
動きが速い。





「 そうそう。よかったら一緒に・・・ 」


「 本当ですか!? 」