あたしの心臓は
壊れてるんじゃないのか。
それくらいにうるさくて、速い。





「 ・・・・楓くん 」


「 はい 」





レモネードの入ったグラスを
目の前に、強く目を瞑って
昨日のことを思い出した。





「 舞さん・・・って 」


「 舞ですか? 」





”彼女なんですか?”なんて
聞きたくもなくて、あたしは
つい、先を言わずに頷いてしまった。





「 舞は中学からずっと同じクラスで・・・
  菜緒さんほどではないんですけど、
  結構本の趣味が合うんですよね。
  少女漫画とか、恋愛小説だとか、
  そういうのが好きそうなのに 」





”変ですよね”とケラケラと笑いながら
だけど少し、その表情がいつもより
柔らかく、優しく見えたのは気のせいだろうか。