「 今日、授業ないんです 」
「 ?・・・それじゃ、図書館ですか? 」
「 いえ、楓くんのところに
行こうと思って・・・ 」
「 あぁ、それじゃ、今日は一日
店に居てください 」
コクン、と頷いて笑って見せれば
”子どもみたいです”と再度
髪をくしゃっ、と撫でられて
もう、”期待”ばかりで。
涙を見せたあたしはズルい。
だけどそれ以上にこうして
あたしを無意識に苦しめる
彼は、きっともっとズルい。
「 菜緒さん、入ってください 」
「 わっ・・・!ごめんなさい 」
大好きな人の背中を追いかけて
お店の中に入れば、まだ薄暗くて、
”開店前のお店に入ったのは
菜緒さんが初めてなんですよ”と
彼は笑って言った。