「おはようっ、咲ちゃん。ハイ、プレゼント!」
これがメールの文面なら、ハートマークが何個も飛んでいそうな言い方で差し出されたもの――ピンクで統一されたラッピングの箱を目の前に、あたしの唇は引きつる。
もちろん小さい頃からずーっと繰り返されてきた毎年のやりとりなわけだから、別に今更驚くことなんてない。ないとはいえ――やはりいいかげん見た目と精神年齢が一致しなさすぎなのでは、と疑いたくなる自分の母親を、ちょっと心配したくなったのは本当だ。
「う、うん……あ、ありがと、ママ。でもさ、一応バレンタインって男の人にチョコあげる日でしょ? あたしも春には高三なわけだしさ、そろそろこんな頑張って用意してくれなくても――」
困ったように頭をかいて言ってみる。けれど当の本人はいたって気にした様子もなく、あたしの言葉に込められた本当の意味を察することもなく、ニッコリ純真そのものの笑顔を返してくれた。
「ううん、いいのいいの。だってママお菓子作り好きだし、それに咲ちゃんもチョコレート大好きでしょう? ママ、咲ちゃんが喜んでくれるなら、たとえ咲ちゃんがお嫁に行っても、ずーっとチョコあげるから! ねっ? ほら、受け取って」
ずい、と目の前に差し出されてしまっては、受け取るほかない。ひきつり笑いを浮かべつつ、それでもあたしは両手に余る長方形の包みを通学用の鞄に入れた。
本当は家に置いていきたかったけど、持って行ってくれるものと信じて疑わない母親の期待を裏切るのも心苦しかったからだ。
「じゃあ、行ってきます……」
「はーい、行ってらっしゃーい! 車に気をつけてね」
これがメールの文面なら、ハートマークが何個も飛んでいそうな言い方で差し出されたもの――ピンクで統一されたラッピングの箱を目の前に、あたしの唇は引きつる。
もちろん小さい頃からずーっと繰り返されてきた毎年のやりとりなわけだから、別に今更驚くことなんてない。ないとはいえ――やはりいいかげん見た目と精神年齢が一致しなさすぎなのでは、と疑いたくなる自分の母親を、ちょっと心配したくなったのは本当だ。
「う、うん……あ、ありがと、ママ。でもさ、一応バレンタインって男の人にチョコあげる日でしょ? あたしも春には高三なわけだしさ、そろそろこんな頑張って用意してくれなくても――」
困ったように頭をかいて言ってみる。けれど当の本人はいたって気にした様子もなく、あたしの言葉に込められた本当の意味を察することもなく、ニッコリ純真そのものの笑顔を返してくれた。
「ううん、いいのいいの。だってママお菓子作り好きだし、それに咲ちゃんもチョコレート大好きでしょう? ママ、咲ちゃんが喜んでくれるなら、たとえ咲ちゃんがお嫁に行っても、ずーっとチョコあげるから! ねっ? ほら、受け取って」
ずい、と目の前に差し出されてしまっては、受け取るほかない。ひきつり笑いを浮かべつつ、それでもあたしは両手に余る長方形の包みを通学用の鞄に入れた。
本当は家に置いていきたかったけど、持って行ってくれるものと信じて疑わない母親の期待を裏切るのも心苦しかったからだ。
「じゃあ、行ってきます……」
「はーい、行ってらっしゃーい! 車に気をつけてね」