でも意外にも夜と共にしたのはそれから一ヶ月も後だった。彼は私よりひとつ年下だったけれど、若い男にありがちのがっつく姿勢はほとんど見られなかった。

「俺がナユタで君がキョウ。なんか、運命みたい」
 
その上情熱的でもなかったそのベッドの中で、彼はいつもの調子でそんなことを言ってのけた。
 

私は「馬鹿じゃないの」と答えたはずだ、たぶん。
 
そして一度も、私の名前は確かに京だけど、ケイじゃないとは言っていない。

 
シャワーを終えて適当に着替えてから部屋に戻ると、ナユタは既に眠りに落ちていた。
着てきたデニムだけを履いて、ふたりの汗に湿ったベッドに身を沈めながら。

部屋に差し込む光は既に橙色。ただ雲の多さから、いつもほど眩しくない昼間の終わりだった。
 

ふと目を遣れば、花瓶から菜の花が消えていた。もちろん消失したわけではなく、それはナユタの手の中にある。

何気なく鼻を近づける。甘いような、青いような独特の香り。
悪いけれど、その中にエロティックな要素は何もみつけられなかった。
 
床に散らばる衣服を片付け、私は青いだけのカーテンを引いた。