「不可思議があるわよ」
「あれは、不可思議なほど数が大きいってこと。考えることが出来ないぐらい」
「じゃあ那由多は」
「極めて大きな数」
「何か違うの」
「不思議じゃないってこと」
 
そこでナユタは手近な菜の花を摘み取った。風が菜の花の香りを巻き上げる。

「ちゃんと考えられるぐらい。身の程は知ってる」
 
甘いような青いような、独特の香り。
ここしばらくこの香りに包まれて帰っているけれど、いつまでも慣れないこの季節だけの香り。