この曲はなんだっけ。
そう耳をすますうちに音が大きくなる。

発見する前に当てたい。そんな妙な気持ちを抱えつつ、歩幅を狭める。
背中からさきほどのダックスフントであろう鳴き声が聞こえた。

 
イエロー・サブマリン。
曲名を思い出したと同時に、菜の花に隠れるように座っている男が見えた。
いや本人はその気がないのかもしれないけれど、菜の花は彼を囲むように揺れていた。

「運命だ」
 
思わず声に出た。
ああ、そうか。そうなのかもしれない。

「運命なんて、まやかしだよ」
 
小さなスピーカーを横に置いた男が笑う。
その姿を夕日が染める。遠くで、また犬が鳴いた。