ナユタの顔は好みではなかった。
飄々とした口調も、いつものんきな態度も、時折だらける性格も私の好みとは言いがたかった。

芸術家肌なのか、仕事に打ち込めば連絡なんかなかったし、まともに人間らしい生活もしなくなる。なのにふらっと私の部屋にやってきてさも当然のように言うのだ。映画でも行こうか。
カフェでも行こうか。セックスでもしようか。
 

付き合おう。そんな口約束はしてなかった気がする。

あの日、あぶれた者同士カフェに行ってから何となくの流れで来たのかもしれない。
好きだとか愛してるだとか、ベッドの中でも言い合ったことがない。
 
そうか、考えてみれば、お互いのことを口にしたのは、一週間前がはじめてだったんじゃないだろうか。
そんなに、私たちは互いのことに興味がなかったのだろうか。
 

否、違う。少なくとも、ナユタは。