プルタブを上げると、落ち着く香りが立ち昇る。
 
他に見るものもなく、何気なしに壁に掛けられた簡素なカレンダーに目をやる。
そこでまだあれから一週間しか経っていないことに気がついた。いやもう一週間なのか。
わからない、曖昧な感覚にもどかしさが生まれる。

 
この一週間、私はナユタを忘れなかった。当たり前か。
 
でもたとえばそれは、別れたことを後悔したり、独りになったことを寂しく思ったりしてのことではない。
誘惑に負けて携帯電話の番号を押しそうになったことも、女々しくメールを打ってみようかと思ったこともない。
 

ただ単純に、気になるのだ。
私はあの男の何を知っていたのだろうかと。
私はあの男を好きだったのか否かと。