キスをすると恋が生まれる。だから禁止なの。
 
そんなことを言っていた映画はなんだっただろう。それが間違いであることを、私は知っている。
今ならそっと教えてあげるのに。
そう思った時点で、あなたは恋に落ちているのよ、って。
 

肌を這う指。服を身にまとっていることが煩わしくなる劣情。悲しくもないのに涙を溜める瞳。

「最後ぐらい、好きにしてもいいよね」
 
耳元で囁かれた声は脳を揺らす。温かい舌が首筋をなぞる。感情が背筋を昇る。

 
いつもなら答えただろう「好きにすれば」
だけどそれは声にはならなかった。
最後ぐらい、余計なものは手放して本能に全てをゆだねてもいいやと思った。
 
だって、最後なんだから。最後ぐらい。最後だからこそ。