ああ、やっぱり。
 
思わず口に出そうになった心情は、運ばれてきたコーヒーの香りでも消すことが出来なかった。
 
薄々は気づいていた。いや薄々もなにも、ずっと疑っていたはずだ。何を今更。
 
だけど私は、少なからずショックを受けていた。

 
それを紛らわす本能なのか、無駄なことばかりに目がいってしまう。

隣に立つ女の子は背が小さくて、可愛らしいカーディガンとピンクのふわふわなスカートをまとっていて、足元はローヒールのウェスタンブーツで、どう見ても私より年下だ。
隣に立つナユタは何か袋を持っている。会社の買い出しなのか、これから帰って食べるご飯なのかはここからでは確認できない。

ふたりは笑顔で何かを話しながら、青になった歩道に足を踏み出した。
女の子が時折大きく破顔する。どこからどう見ても楽しそうだ。

ナユタの顔もいつもと何も変わらない。口調まで再現できそうなぐらい、いつも通り。