一体なんでこんなことを急に考え出したかというと、目の前の交差点にナユタがいるからだ。
隣に立つ女の子と喋りながら。
 

今時刻は正午過ぎ。私はいつものようにひとりで会社を出て、わりとよく通うカフェへと来ていた。ランチプレートをオーダーして、鞄に入れていた文庫本を取り出したところ。
周りは似たりよったり。スーツにダサいOLの制服。みんな仕事の合い間、つかの間の休憩の時間。
 
私はサービスで置かれた水に口をつけることはなく、文庫本を開こうとした。
しかしそこで読みかけのミステリーはとてもじゃないが食事どき向けではないシーンだったことを思い出す。
 

だから、視点をあげて、明るい外を見た。
 
行き交う車、オフィス街ゆえにまばらな人々。大きな交差点の向こう、見知った顔を見つける。
いつもと変わらない、ラフな格好のナユタ。