「でも春木さんにだったら、奪われても嬉しいかも」
 
不意に隣の同僚がうっとりとした声で呟いた。
その台詞に唖然としながらも、ふと気づく。
 

つきあうのが面倒なら、そういう相手もいいのかもしれない。好きなときにだけ会う人。

ややこしいことは一切なし、デートすることもプレゼントを贈り合うこともない。ひとりで寂しいなというときに、呼び出したらきてくれる。
 

ただ春木と私では、セックスが好きかどうかという点が違う、きっと。
そしてそれはセックスフレンドだ、だから却下する。
 

あと一応春木の名誉のために認識しなおしておこう。
この男は面倒なことは嫌いかもしれないが、女を幸せにするだけの技術には長けている。
そうでなければ、あちらこちらで浮名を流しても、隣の同僚のような女は生まれまい。
 
もっともそれで好き嫌いのポイントが上下するわけでもない。
春木は春木で、私は私だ。