撫子寮へようこそ。3_嫌々再会。

その、正体は……。

「こんにちは。夏目、恭介さん」
夏目恭介は相変わらずのつめたーい瞳で、理子さんを眺め、サツキを見、和音さんに視線を移し、軽く会釈した。
アウトオブ眼中。私。
「……ってぇ、あんたが夏目恭介だったのね!!」
がたんと音を立てて、私は立ち上がった。
「知り合いやったん? なんかの縁やでー」
キヒヒ、と笑う和音さん。
私は、自分よりも十センチ以上高い男をギッとにらみつけた。
こいつのせいで桜の最悪三割増だったのよ!!
そして、当の夏目恭介。
私を見て一言。

「あんた誰……」

空気が死んだ。私も死んだ。
なんか……自意識過剰みたいじゃん? 私が。
「…………あ、じゃあ。部屋に案内するわね。い、行こう。瑞穂ちゃん」
苦しげに視線をそらしながら、理子さんが言う。勇気のあるお人だな。
「ほら、サツキちゃん。恭介さんにお茶出して」
「えー。サツキ、わかんな……「良いからお出しして」」
目が据わってるよ。理子さん。

空気最悪なのは、私のせい?
いや、夏目恭介のせいだろう。
苦しい雰囲気の中、私と理子さんは二人同時にため息をついたのだった。