撫子寮へようこそ。2_椅子だって壊れるさ。

食堂に通され、椅子を勧められた。断れずに座ったら椅子壊れてた。
…………これ、なんていう罰ゲーム?

「はじめまして、秋山瑞穂さん。撫子寮へようこそ」
理子、と呼ばれていた少女がニッコリと微笑む。
「は、はぁ……」
「なんやまた、かわいらしい子が来たなぁ」
そう言って、セクシーなお姉さんは私の前にコーヒーの入ったカップを置いた。
「ど、どうも……」
「あ、ちなみにうちがこの寮の寮母。和音って呼んだって。年は聞いたらあかんで! あと、そっちのお子ちゃまがサツキ。お子ちゃまやけど、瑞穂チャンとおんなじ高二や。あのヘラヘラした男が、響(きょう)。あいつは入試ん時からマークされとったからな。早いけど、一年の時点でこの寮やねん」
「ちなみに私は高校三年。理子って、呼んでください」
「そ、そうですか……」
「ちょっとぅ! 誰がお子様かー!!」
サツキ、と呼ばれる少女が机に乗り出す……だけでなく、片足すでに机に乗っけている。
理子……さん? は、状況に動じずなんか笑っている。
あと響って人は、私が座って壊れた椅子を直しにどこかへ行ってしまった。

なんだろうこの状況。

「そういえば、もう一人。奨学生の方がいらっしゃるんでしたね」
理子さんがそう言ったのとほぼ同時に、撫子寮の扉が開く音がした。
「来たんちゃう?」
「あ、迎えて来ます」
「いや、その必要はないみたいやで」
なぜなら、玄関から食堂までの距離は約十歩だから。

「こんにちは」

夏目恭介。
その、正体は…………。