撫子寮へようこそ。1_外観は田舎の古い旅館。

放課後。
私は荷物をまとめて、撫子寮の前までやってきた。
聞いた話によると奨学金生で、この寮に移るのは私以外にあと一人「夏目恭介」という男子らしい。
っていうか撫子寮って、ボロイな……。
外観は古い田舎の宿って感じ。なんか出るんじゃない? といいたげな雰囲気をちらほらかもしだしてる。
ぶっちゃけちょっと怖い。
「あら? お客さん?」
「きゃーーー!!!」
叫びながら振り返ると、そこには小柄な女の子がいた。
三つあみにめがねと、なんだか昔の文学少女のような子だ。
「どうかなさったんです?」
「いえ……」
急に話かけられてびっくりしただけ。うん。
「どなたかに御用事ですか?」
「うぅん。奨学金生で、今日からこの寮に移れって言われたんだけど……」
「あぁ、はい。じゃあ中に入ってください」
女の子が、入り口に引き戸に手をかけ、戸を横に引いた。
ガラガラと音を立てて扉が開く。力入れたらすぐ壊れそうで怖い。
「ただいまですー」
「おかえり理子ちゃん。あれ? お客さんー?」
「理子。エロ雑誌は買えたか?」
「んなもん自分で買ってきたらええやろ? 理子ちゃん。その子誰や?」
扉を開くと、三人出てきた。
一人はちっちゃいお子様。もう一人はヘラヘラした男。もう一人はやたらセクシーなお姉さんだ。
「この方は奨学金生で、今日からここに住む方です。ね? 秋山瑞穂さん?」
知らないうちに名前までばれていた。
世の中って怖いよー。