驚愕の始まり。3_むかつく男。

手の主は男だった。
パンプスを履いてる私より、五センチは高い。
そいつは氷みたいに冷たい目で、こっちを見ていた。
「これ、あんたの?」
「わ、私の、友達のっ! 返せ」
息も切れ切れに叫ぶと、そいつはスーッとバッグを自分の頭上まで掲げた。
……っ!?
私はピョンピョン跳んで(ひったくり犯の上)、バッグを奪おうとするがなかなか届かない。
何よこいつ! 親切なやつだと思ったのに。
跳ねる私を見て、そいつは「ハッ」と鼻で笑ってきた。

む、か、つ、く……!!

「おまわりさぁーん。あれでーす。ひったくりぃー」
向こうから、涼子の甘ったるーい声が聞こえた。
青い制服を着た警官と一緒に、こちらへやってくる。
「涼子……」

『ばーか』

「え?」
気がつくと、男はいなくなっていた。
私の手には、涼子のバッグがあり、ひったくり犯は私の下で伸びていた。

これが、今年の桜の後の出来事。
だがしかし!
これで今年の不幸が終わったなんて考え、甘かったのだ。

本物は、始業式の前日に起こった……。