春。

芽吹いたばかりの桜が競うように自らの花びらを散らしている。

その大量の花びらによって、淡いピンク色へと化したアスファルトの地面


―に、一人の少女が座り込んでいた。


「…おいしい。」


少女は一枚の板チョコ―一部食べられて欠けていたが―を手に持ち、つぶやいた。


「…おいしいよ、つぐみ。」


ごめんね。


「いつかちゃんと伝える。だから…」




桜が、更に舞った。少女は、いつしか泣いていた。
ここにはいない誰かを思って。