美和:「もしもしー、なに杏里責めてんの?」

幸樹:「責めてねーよ。」

美和:「杏里困ってたけど?」

幸樹:「困らせた覚えなんてねぇよ。」

美和:「でも困ってんの。あんたが自分勝手に動こうとしてるからでしょ?」

幸樹:「一発殴りに行こうかと思ってただけだわ。」

美和:「それが原因なの!悟りなさいよ。」

幸樹:「それのどこが不満なんだよ。」

美和:「あんたが今まで付き合ってきた人達とは違うんだからっ」

幸樹:「どうすればいいんだよ。」

美和:「手を出さなければいいんです。」

幸樹:「マジかよ…だって俺、すぐ杏里に会えるわけじゃないんだぞ?余裕ねぇって…」

美和:「だったら、余計杏里のことを信じてあげなさい。」

幸樹:「…わかった。杏里に変わって。」

美和:「勝手にごめんね。」

美和が小声で謝る。
ちょっと、助かった。

杏里:「もしもし。」

幸樹:「さっきはごめん。勝手にイライラしてた。」

杏里:「ううん。ウチの方こそ何も言わずに出ていってごめんね。」

幸樹:「俺、ちゃんと杏里を守りたいんだわ。」

杏里:「うん、ありがとう。もう関わんないから安心して。」

幸樹:「…わかった。じゃぁ、次そいつからメールとか来たらすぐ俺に言って。」

杏里:「うん、そうするね。」

ちょっとだけ、
幸樹が怖かった。
初めてあんな言い方された。
ウチが、健吾なんて
相手にしなければよかったと、
少しだけ、自分を責めた。