ある日、
一本の着信が
部屋の中で鳴り響いた。
杏里:「…っ!?」
怖かった。
だけど、
なんども鳴る着信音。
ウチは携帯をデスクの上から
そっと持ち上げた。
深夜の2時…
ずっと幸樹と
メールをしていたウチは、
幸樹に一言告げた。
Dear:幸樹
From:杏里
ちょっとごめんね。
出る用事ができたから
今日はもうメール終わるね。
明日またメールします
その一通を送って、
ウチはすぐに家を出た。
Dear:杏里
From:幸樹
え、こんな時間に
どこ行くの?
幸樹から来たメールに
気づかないまま…
その日の朝。
あきらかに寝不足の
ウチの顔を見て、
美和がかしこまりながら
話をきり出してきた。
美和:「あの、さ。」
杏里:「うん?」
美和:「付き合ってるんだってね、幸樹と。」
杏里:「…!?」
美和:「よかったね♪」
杏里:「えっと…、ごめん。」
美和:「なんで謝るのー?」
杏里:「その、ずっと言えなくて…」
美和:「言いづらいのは当たり前だよ♪怒ってないよ?」
杏里:「うん、ありがとう。」
美和:「それでね、質問なんだけど。」
杏里:「なに?」
美和:「昨日何してた?」
杏里:「…。」
美和:「これはウチからもだけど幸樹からの質問でもあるの。」
杏里:「…。」
言葉が出てこなかった。
美和:「杏里ん家って門限7時でしょ?でも家を出たのは夜中の2時。よっぽどのことがないと出ないはずでしょ?」
杏里:「…昨日は」
そう口にした瞬間、
学校のチャイムが鳴った。
美和:「…あとで聞くね。」
そう言って
美和は席に着いた。
そして同時に
ウチも席に着いた。
“あとで聞くね”
そう言った美和の顔が
初めて見た表情だった。
きっと、
すごく心配されてるんだって、
そのとき初めて気づいた。
ウチは覚悟を決めて、
美和に相談する事にした。