杏里:「美和は悪くないよ。隼斗くんも悪くない。誰のせいでもない。それは美和が一番わかってるでしょ。」

小さく美和が
頷いたのを確認して
再び口を開く。

杏里:「だったら、自分が悪いなんて思っちゃダメだよ。」

美和:「…さっきは、別れたなんて言ったけど、実際まだわかんないの。このままウチら…終わっちゃうのかなぁ…」

消えてなくなりそうな
美和の震えた声。

ウチにしてあげられることは何?


ただ、美和を強く
抱き締めることしか
できない自分が
腹ただしい。

もっと何かしてあげたいのに
何もしてあげられない。

ごめんね。


少し落ち着きを取り戻す美和。

美和:「杏里、ありがとう。」

杏里:「ううん、何もできなくてごめんね。」

美和:「話聞いてくれたじゃん。抱き締めてくれたじゃん。一緒に泣いてくれたじゃん。それだけで充分だよ。」

杏里:「あー、そんなこと言われると感動してまた泣いちゃうー!!」

美和:「もう泣いてんじゃんw」


そのあとウチらは
ずっとずっと泣き続けた。

一人のために
こんなに涙を流せる美和が
ウチにはすごく羨ましかった。

ウチはずっと
フってばっかだったから
そんな経験したことなかった。

人をこんなにも想えるんだって
ウチは美和に感動した。

いつか、ウチも
そう強く想える人が
現れますようにと
そっと願った。

不意に幸樹を思い出す。

杏里:(幸樹…でも幸樹がウチを本気にしてるとは思えない…)

ホントは本気で幸樹を想いたいし
想われたい。
だけど、ウチの中での“不良”は
そこまでいい印象では
なかった。