気付くと8時半をまわっていた。

杏里:「え、ちょっ、ホントにやばいかもっ」

幸樹:「だよね、ごめんww」

杏里:「笑いながら言うなぁー!絶対謝る気ないでしょ。」

幸樹:「だって楽しかったからいっかなって思ってww」

杏里:「まぁ、楽しかったけどぉ…」

幸樹:「はい、じゃぁ怒らない♪帰るよ。」

杏里:「うん。」

ウチらは手を繋いで
駅を目指した。

杏里:「幸樹。幸樹の駅は反対方向だよ?」

幸樹:「杏里を駅まで送るの」

杏里:「え、いいよ遠いいし」

幸樹:「いーの、送ることは彼氏の役目なんだから。」

杏里:「誰が決めたのww」

幸樹:「もちろん俺っ♪」

駅の改札口前。
人が溢れかえっている。

幸樹:「ナンパされんなよww」

杏里:「ナンパされるほど可愛い顔じゃないww」

幸樹:「いや、充分可愛いのでお気をつけてお帰り願います」

杏里:「はい、はいwwじゃぁね。」

ウチが振り返った瞬間、

幸樹:「杏里待って。」

幸樹に呼び止められた。

杏里:「?」

幸樹の方に振り返るウチ。

杏里:「!?」

不意に抱き寄せられ
唇が重なる。

幸樹:「じゃぁな。」

杏里:「え、あ、うん。」

いまいち状況がのみこめなくて
曖昧な変事をしてしまった。

改札口を通り
ホームへと歩く。
時刻表を見て
次の電車を待つ。

杏里:「……っ!?」

今になって
キスをされたことに気づく。

杏里:(え、え、駅でキスされたっ!!)

公園でしたキスとは別で
駅のど真ん中、
人が沢山いるなかで
堂々とキスをした。

徐々に恥ずかしさが増してゆく。
だけどその反面、
嬉しさもあった。
きっと心のどこかで
“こういうの”に憧れていた。

キスをしてた時の
まわりの人達の反応は
ウチらのことを
迷惑だと思ったに違いない。

だけど嬉しすぎて
申し訳ないという気持ちに
今はなれなかった。

ウチはさっきのことを
思い出しては
頬が上がるのを感じていた。