幸樹:「杏里、反応可愛いっ」

杏里:「可愛くないー、ってゆーかハズイっ…」

幸樹:「可愛いな。こっちでしょ、やってほしかったのは。」

一瞬何が起こったのか
全然把握できなかった。

だけど不意に、
唇に熱を感じた。

杏里:「…っ!?」

幸樹:「…キスは目を閉じるんだよ?」

唇が触れたまま幸樹が話す。
その言葉で
ウチはゆっくり
目を閉じた。



長い長いキス。
へたくそなウチのキスを
幸樹はうまく包んでくれた。

幸樹:「…杏里。」

杏里:「…なに?」

幸樹:「好き。」

杏里:「ウチも好きだよ。」

そして2人で笑い合った。

ホントに幸せだ。
ずっと一緒にいてね、幸樹。

そう心の奥で呟いた。




杏里:「ヤバイ、もうこんな時間っ!?」

時計を見ると
もう6時をまわっていた。
ここから家まで45分かかる。
ウチん家の門限は7時だから
そろそろまずい。

杏里:「幸樹、ウチ帰らなきゃ」

幸樹:「…。」

杏里:「幸樹?」

幸樹はウチを強く抱き締めたまま
ずっと下を向いていた。

幸樹:「…。」

杏里:「幸樹、ウチ…」

そう言いかけた瞬間、
幸樹が言葉をかぶせてきた。

幸樹:「いや。」

杏里:「…え?」

幸樹:「帰したくない。」

杏里:(可愛い!www)

幸樹:「まだ3時間くらいしか一緒にいない。」

杏里:「でもそろそろ帰らないとお母さんに怒られる…」

幸樹:「いいの。」

杏里:「いや、よくないから」

幸樹:「今まで会えなかった分一緒にいたい。」

杏里:「…わかった、じゃぁもうちょっとね。」

幸樹の可愛さに負けた。

そのあと、
ウチらは何度もキスを交わした。
まるで会えなかった分の
気持ちを埋めるように。
まるで別れを惜しむように。