幸樹:「本八幡ってどこ?」

杏里:「だよねー、そうなるよね…」

幸樹:「津田沼(つだぬま)。」

杏里:「…え?」

幸樹:「津田沼まで来れるんだったら会える。」

杏里:「…わかった、行く。」

津田沼なんて
行ったことないし
どこにあるのか
わかんないけど、
それでも幸樹に会いたかった。

だって、
ウチらは付き合ってる。
だけど一度も
会ったことがないの。
写真と声しか知らないの。

もし、幸樹に会えるのなら、
ウチはどこへでも行くよ。

幸樹:「じゃぁ後でな。」

杏里:「うん。」


杏里:「…美和。」

美和:「うん?」

杏里:「津田沼まで案内してくれる?」

美和:「りょーかい」

ウチらは錦糸町をあとにした。





津田沼に着いたころ、
もう3時半をまわっていた。

杏里:「やばい、ドキドキする」

美和:「そりゃそうだよ。」

杏里:「ちょっと、座りたい」

そう言って、
ウチはその場にしゃがんだ。
それにつられて
美和も腰をおろす。

美和:「来ないねー」

杏里:「だねー。」

美和:「幸樹が来たらウチどっか行くね♪」

杏里:「ぇえ!?一緒に居てくれないの?」

美和:「邪魔したくないし」

杏里:「マジで…」

ウチは目線を下に落とした。
そのとき、
目線の先に
スニーカーを履いた足が
立ち止まった。


胸が、高鳴る。


杏里:「…。」

そっと顔を上げる。
その先には見覚えのある顔。
写真で見たことのある顔。

幸樹…?

美和:「遅い!」

幸樹:「わり。www」

美和:「じゃ、ウチはこれで♪」

幸樹:「おぅ、じゃぁな。」

美和を見送る幸樹。
その横顔を見つめていた。

幸樹が振り向く。

幸樹:「行くか。」

優しい笑顔にまた、
胸の高鳴りを感じた。