扉の嬉し泣き。
「…はじめてだよ
はじめて泣いた。
はじめて嬉しくて泣いた。
ああーーー!!!!!!
ああーーー!!!!!!」
「うっせえよ、馬鹿」
「十利いーーー!!!!!!」
「うるせぇから」
俺たちは笑った。
コイツの心の中にずっと、
ずっとずっと住んでいる黒い記憶を
白く塗りつぶしたかった。
「帰るか」
「うん」
チャリの向きを変えた。
そのとき、
「十利いー!」
後ろから聞き慣れた女の声。
小春だ。
走ってこっちにきた。
「なんだ!お前帰り遅くない?」
「今日図書館で勉強してたの。」
「そうか。」
「あ!この男の子、転校生の!」
「向坂扉っていうんで。」
「うん、よろしくね」
小春の笑顔をみたとたん、
扉の目がハートになった。
あれれ?
もしかして扉の初恋かな?
俺と小春と
赤くなった扉の笑顔は
オレンジ色に染まっていった
夏はもうすぐそこだ。