「もう授業始まるよ?」
東雲 心春
シノノメ コハル
俺の幼なじみ。
「分かってるよ」
「十利のお気に入り?」
「は?」
「この場所。」
特別棟4階一番奥
外へ繋がるコンクリートの階段
生徒は誰もここへは来ない
立ち入り禁止されている。
何十年も前の話になるけど、
今じゃ名誉あるこの高校は
県内でも名の通った不良高校だった。
不良はこぞってここに溜まって
そりゃあ、まあ、
法に引っかかる行為ばっかりしていたらしい。
コンクリートの地面に黒い部分があるのは
タバコの消し跡だろう。
所々残っている血痕もある。
こんな階段でケンカするなんて
そりゃあ血も出るわ。
こんな汚れ、
ペンキで塗り潰せばいいのに。
不気味だけど俺は、
「気に入ってる。」
この高校の歩み.痕跡.足跡
ここに表されている気がする。
だから。
「私のお気に入りの場所はね、
教室の今の席!」
「そーなんだ。」
「うん!!」
「窓際から二番の一番後ろ?」
「うん。」
「俺も窓際から
二番の一番後ろの席、
結構好きだよ。今の席。」
「じゃあ、教室戻ろ!!」
「わーったよ。」
先に走っていった後ろ姿を
俺は目で追って、同じ道を歩いて
教室に向かった。
いつもと同じ朝。