それから二人は、星を見たり、互いの魔術師生活にまつわる話をしていた。

フェルトの修業時代の話。

エーテルの魔術師承認試験での体験など。

フェルトもそうだし、エーテルも、普段は人と、こんなに話す機会がなかった。

国での生活で事務的な会話が身についていたエーテルは、マイを迎えに行った日、人との血の通った接し方を忘れている自分に気付き、内心困惑したくらいだ。


だが、今夜は特別。

魔術師同士、通ずる部分があったのかもしれない。

お互いの話に興味が持て、時間が過ぎるのは早かった。


座り込み、すっかり話し込んだ二人。

東の空が白む頃、フェルトは立ち上がり、エーテルに訊いた。

「もう、夜が明けますね。

また、こうしてお話に来てもいいでしょうか?」

「いつでもどうぞ」

「楽しみにしています。

ありがとう」

フェルトはつややかな黒髪を新しい風になびかせ、最後にエーテルの方を一度だけ振り返ると、空気に溶け込むようにその場から消えた。