この間イサに対して取った態度と、ずいぶん違うフェルトの言動。
エーテルの調子は狂いそうになった。
「……今まで、一人で暮らしてきたマイが無傷でいられたのは、もしかしてあなたが……?」
「お察しの通りです。
私がマイさんを護(まも)っていました。
彼女は全く知らないでしょうが、あの丘にはマイさんを殺す目的を持った多数の軍勢や裏組織の暗殺者が押し寄せていました。
マイさんは自分の魔法能力を使って商売していましたからね。
それは生きていくために必要なことだったので否定する気はありませんし、だからこそ私は、警戒して彼女を見ていたのです。
『この世でたった一人の、魔法使いの生き残り』という観点で見たら、マイさんの暮らしぶりは何とも無用心過ぎましたからね。
敵はどんな手を使ってでも、情報を仕入れます。
しかも、マイさんの能力は生き残りとは思えないほど強い。
『何かの使命を貫くために生かされるべくして生かされた魔法使い』と言っても過言ではないでしょう」
エーテルの背筋は冷えた。
マイを狙った敵勢力を想像し、鳥肌が立つ。
やはり、マイがこうして生きていられるのは奇跡だったのだ…と、思い知らされた。
「マイを護ってくれて、本当にありがとうございます」
エーテルは素直な気持ちでお礼を述べ、深く頭を下げた。