満天の星を指さし、イサはつぶやく。

「こんなにいい夜なのにな」

いま世界に広がっている不穏な予兆など無いもののように、小さくまたたく星々。

それを眺めていたら、悪夢で高鳴っていたマイの鼓動も、少しずつ落ち着いていった。


「イサ。いつもありがとう。

こんな私のために、イサもエーテルも、眠らないで守ってくれてる。

それなのに、私にはできることがなさすぎて……。ごめんね」

「そんなこと気にするなよ。

こういうの、半分は修業だと思ってやってるから」

「修業?」

マイは不思議そうにイサを見る。

「今までは、毎日、城の中にある訓練場で剣術の稽古をしてた。

ある程度実力が認められたら、外部から城下街に侵入してくる魔物の退治にも行かせてもらえるようにもなった。

そんな日常にやりがいを感じてのは確かだけど、同じようなことを繰り返す日々はどこか退屈でもあって。

ずっと、外の世界に出て、旅をしてみたいと思ってたんだ。


それに、マイが何の役にも立ってないなんて、思ったことないから」

イサは優しい瞳でマイの方を見た。

誰にも見せていなかった柔らかい視線。

マイは照れくさくなり、反射的に目をそらす。