「マイ、大丈夫か?」
気を取り直して、イサは尋ねた。
彼の声も聞こえていないらしく、マイは額から脂汗を出し、ぜいぜいと息を切らしている。
イサはマイにハンカチを差し出し、
「悪い夢を見てたみたいだな」
と、気遣うように言った。
イサの姿を目にして安心したマイは、時間をかけてゆっくり呼吸を整え、
「……ごめん、ビックリさせちゃった?」
と、イサに謝った。
異性に変なところを見せてしまった気恥ずかしさもあり、マイはうつむく。
「謝ることない。
落ち着いたみたいでよかった」
イサの優しい言い方が胸にしみて、夢で感じた恐怖も和らぐ。
草の匂いが混じるかわいた夜風は適度に涼しく、汗ばんだマイの体を冷やしてくれ、悪夢に乱された心にも清涼感を運んでくれる。
おかげでマイは、じょじょに普段の自分に戻ることができた。
「夢の内容は覚えてない……。
でも、ものすごく怖かった」
言いながらマイは、イサから受け取ったハンカチで額と首にしたたる汗を拭いた。