イサは強く歯をくいしばり、

「俺が、国に従うだけの犬?

馬鹿?

護衛しか能がない?」

と、手を震わせた。

エーテルは何も言わずにイサを見つめる。

「イサ……」

マイも、彼にかける言葉が見つからずに黙りこんだ。

そんな重たい空気を吹き払うように、テグレンが気丈に口を挟んだ。

「私にもよくわからないけどさ……。

フェルトは、あんた達の敵ではないんじゃないのかい?」

「なんでそう思うの?」

マイは不安げに尋ねる。

「敵だったら、あそこまで親切なことは言わないさ。

フェルトは、言い方こそクセがあるが、イサのことを心配しているように見えたよ。

単なる年寄りのカンだから、どこまで当たってるかはわからないけどね」

テグレンの言葉を耳にしたイサは、少し落ち着きを取り戻した。

「ありがとう、テグレン」