「アスタリウスかあ……。
聞いたこともないし、昔イサと一緒にいたことも、その国で生まれ育ったっていうことも、全く覚えがないよ……」
マイは困惑した。
フェルトは元の涼しい瞳に戻っていて、
「覚えていなくて当然ですよ。
あなたには強い封印魔術がほどこされていますからね」
と、エーテルの方を見た。
エーテルはマイから目をそらしてうつむく。
「私に封印魔術が!?
全然気がつかなかった……。
フェルトさんは魔術師だから、そういうのが分かるんですね!」
マイはフェルトを知的に思い、感心している。
イサはフェルトを見つめ、
「これが、マイに隠していたことの全てだ。
……次にガーデット帝国を襲ってくるのは、マイの国を滅ぼした勢力かもしれない。
マイと手を組むのが、ガーデット帝国とルーンティア共和国にとって、一番の安全策なんだ」
「君達の思惑が、本当にそれだけであることを願っていますよ。
無意味な血を、もう、見たくはないですからね」
フェルトはそう言い、イサ達に背を向けた。