マイやイサの前に現れた自然の神達。

グレンやアルフレド以外にも、そういう存在はいる。

地中の守り神や空間の守り神は、神としての能力がずば抜けているという話だ。

彼らは、自然の神達の前にすら、現れることがないという。

そういった、全世界に点在する自然の神達を全員呼び集めてようやく、黒水晶は創作されたのだ。

2つ目の黒水晶も、同様。

再度作られた黒水晶は誰にも渡さず、彼らは、自分達の手元で順番に保管していた。

黒水晶が人手に渡ると世界にいらぬ混乱を招く。

不必要な争いを生み、人間の心を欲望で狂わせてしまうのだと、痛いほど身にしみたから……。


マイを含め、魔法使いがこの世に存在しなくなった現代、自然の神達を実体化させる黒水晶の存在も、本来の意味を持たなくなってしまったが、

彼らは、マイとイサのことを忘れないために、こうして今も黒水晶を大切にしている。

神達の間で続いてきた黒水晶保護の風習は、これからも変わらず続いてゆくことだろう――。


現在の黒水晶は、

人の願いを叶えるためのものでもなく、

誰かを攻撃するための兵器でもなく、

魔法使いを愛した神達の心を表現するもの――。