少年が墓の前から立ち去るのを、上空から見ている者達がいた。
「よく我慢したな。グレン」
静かにそうつぶやいたのは、風の守り神·ルーク。
グレンは両手の拳を小刻みに震わせながら歯を食いしばり、
「あいつ、マイの子孫なんだろ?
声かけたかったー! ああー!!
髪や目の色まで、マイそっくりじゃんっ」
と、身もだえしている。
水の神·アルフレドは、清涼感をたたえたまなざしで、
「あれから1千年も経ったというのに、お前は変わらないな」
と、あきれている。
いつも冷静なアルフレドの言葉に反発せず、グレンは疑問を口にした。
「イサとの関係を切ってまでマイが選んだ自然の神って、誰なんだ!?
俺だって、俺だって、マイが大好きだったのにぃっ!」
「そんな風だから、グレンは相手にされなかったのよ」
和装姿の土の神·リジェーノは、女の視点からものを言う。
彼ら自然の神は、不老不死の存在。
マイが暴走した時、彼らは一度、黒水晶を粉々にした。その時に出来た黒い粉末を、ひっそりこの丘にまいたのだ。
だからこそ、マイの子孫をここに呼び寄せることが出来たのかもしれない、と、一同は感慨(かんがい)にひたっていた。