少年が目的の丘に着くと、イサの墓はたしかにそこにあった。

遮るものが何もない、ただっ広い緑の丘。

胸を切なくする草花の香り。

少年の眼下には、オリオン街が小さく見える。


墓の存在を疑っていたわけではないが、いざこうして目にすると、少年は寒気を感じずにはいられなかった。

恐怖心のせいではない。

知りたかったことにやっとたどりつけた、そんな感動と衝撃からだ。

『武者震い』とは、こんな感覚に近いのかもしれない、とも思う。


古びた墓はどこか悲しげだった。

それをかき消すように、色とりどりの綺麗な花が添えられている。

定期的に、誰かが墓参りに来ているのだろうか。

墓石も綺麗に掃除されている。


「マイ様。聞いてください」

バッグの奥から手帳を取り出しページを広げると、少年はその場に片ヒザをついた。

墓石に話しかけるようにして、イサが書いたと思われる手帳の文面を読み上げる。

「『マイ。君が幸せなら、私も幸せだ。

君はいま、何を見て、何を感じてるんだろう。

まだ、コエテルノ·イレニスタには戻らない。

再び出会えるその日まで、君が幸せでいてくれますように』」