少年の先祖に当たる魔女は、剣術師の人間男性を愛していた。
しかし、自分の魔法が世の中に災いをもたらすと考えた彼女は、剣術師の男性と共に歩む未来を諦め、空に城を作った……。
昔、この世に点在していたといわれる自然の神達は、魔法使いの彼女に同情し、彼女を慈しみ、何よりも大切にしていた。
彼女は、自然の神達が生み出した黒水晶を通して神達とコミュニケーションを取り、自身の孤独や寂しさを癒していった。
少年は自分の胸に片手を当て、目をつむる。
“僕は、自然の神と魔法使いの間に生まれた者の子孫だ。
剣術師の「彼」は、ご先祖様の魔女がたどった道を知っているの?
僕の国のことを知ったら、どう思う?”
今、先祖は生きていないのだから、その《剣術師の男性》も生きているはずがない。
分かってはいたが、少年はこの地に訪れずにはいられなかった。
先祖の想いを伝えるために……。