「フェルトさんは元々魔術の才能があっていいかもしれない。

でも、私は違う。生まれてきた意味なんて、ないと思うわ。

魔法も使えない。

好きな人には振り向いてもらえない。

ヴォルグレイト様にまで利用されようとしてた。


中途半端な混血の人間だもの……」





イサの部屋を目指して走ってきたテグレン。

部屋の前で立ち話しているリンネとフェルトを目にし、テグレンは歩幅を広げる。

悲しみに満ちたリンネの声が聞こえた。

「おばあちゃんだって、マイちゃんがいれば充分なんだよ……。

こんな孫がいるって知った時、おばあちゃん本当は落胆したんじゃないかしら。

私はマイちゃんみたいに魔法薬を作って人の役に立ったり、攻撃魔法を使って魔物から身を守ることもできない。

今朝だって、足の調子が良くないのに、おばあちゃんは遠くまでマイちゃんを探しに行った……。

私が家出しても、あんな風に探してもらえるとは思えない」

「リンネ……」

テグレンは“私に任せて”と言わんばかりにフェルトの顔をうかがい、後ろからリンネを抱きしめた。

「!!」

感情的になっていたため、テグレンにそうして抱きしめられるまで、リンネはテグレンが城に戻ってきたことにも気付いていなかった。

「私はね、マイとリンネ、どちらも同じくらい可愛いし、比較したことなんか一度もないよ。

そうやって、長い間寂しい思いをさせていたんだね。

気付いてあげられなくてごめんよ……」

「おばあちゃん……」

テグレンの体温は、冷たい孤独に苛まれていたリンネの心をじんわりとあたたかくしていった。