《イサへ》

宛名が記された後に、エーテルが書き残した文字が続いている。

ツバを飲み込み、イサはその先を目で追った。

《イサ。元気にしてる?

あなたは今、笑えているかな?


……この手紙がイサの手に渡ったということは、私はもうこの世にいないのね。

それは、私が、国の命令に背いたことを意味する……》


「エーテルが、ルーンティア共和国の命令に、背いた……?」

イサには信じがたいことだった。

なぜならエーテルは、自国の命令には必ず従う、忠実な女性だったからだ。


《ヴォルグレイト様が私の両親を利用して禁忌を犯したと判明した時、ルーンティアはイサのことも危険因子とみなした。

ゆえに、ヴォルグレイト様の処刑決行後、イサのことを禁固刑に処することが決定していた。》


「禁固刑っ!?」

イサは声を大にした。

禁固刑になった者は労働もできないし、外出も許されない。

死ぬまで、牢獄(ろうごく)に幽閉される。

だが、イサはルーンティア共和国からそんなことを言い渡されていない。

それどころか、罪人の息子とは思えないほど良い扱いを受けてきた。


世界中にコエテルノ·イレニスタ王国を認めさせ、繁栄を維持できているのも、ルーンティア共和国の力添えのおかげである。