リンネにそう頼まれてはじめて、イサはクッキーを手放すことへの未練が湧いた。

今は食べる気がないし、リンネの言うように、食べないのなら他の誰かにゆずるのが1番いいことなのかもしれない。

クッキーも、菓子としてこの世に生まれた以上、誰かに味わってもらいたいだろう。

「でも……。これはルークからの贈り物だから、リンネに頼まれても渡せない。

なんて言ったらいいんだろ……。お守り代わりに持っておきたいっていうかさ。

マイを探すのに、あと何年かかるか分かんないし」

「何年かかるかも分からないのに探しに行く気なの!?」

普段の穏やかな様子からは想像できないほど、リンネは興奮している。

「リンネ、何でそんなに怒ってるんだ?

マイのこと、心配じゃないの?」

「……!!」

リンネは一瞬だけ唇を強くかみしめた後、まくし立てるように言った。

「私はずっと、マイちゃんなんていなくなればいいって思ってた!

双子だか何だか知らないけど、私にとってそんなことどうでも良かった。

11年ぶりに会っても親しみなんて湧かなかったし、今さら会っても姉だなんて思えないよ!


ガーデット城の外に出られなかった私にとって、イサやエーテルと話す時間は唯一の楽しみだったのに、マイちゃんが現れてからエーテルは死んだ……!

おばあちゃんに会えたのは幸せだけど、イサがいなくなるなんて嫌!

イサはずっと、そばにいてくれるよね!?

マイちゃんなんかに、私の大事なものをこれ以上奪われたくないの!

イサ、お願い。私のこと、ひとりにしないで!!」