「ずっと気になってたんだけど、マイに対してよそよそしくないか?

再会してから1年以上経つんだし、家族なんだし、そろそろ普通に呼んだら?

なにより、リンネのお姉ちゃんなんだしさ」

気を使って、イサは柔らかい物言いをする。

でも、リンネは口をつぐみ、イサをジッと見つめるだけ。

弱気ながらも、何らかの強い意思がこもった彼女の瞳は、マイの姿を思い起こさせるのに十分すぎた。

イサの中で、マイに会いたいと願う気持ちが一気に膨らむ。

「俺も、これからマイを探しに行く。

って言っても、手がかりがないから、長旅になるかもしれない。

リンネも行くだろ?」

「…………」

今は、リンネとにらめっこをしている場合じゃない。

マイ探しの旅は、予想以上に長期に渡るものになるかもしれない。

イサは、旅行に行くかのように大きなバッグを用意すると、着替えや日用品など、必要な物を急いで詰め込んだ。


リンネは、マイがいなくなったことに全く動揺していない。

イサは、そんな彼女に違和感を強めつつも、身支度を整えた。


「じゃあ、行くから」

バッグ片手に部屋を飛び出そうとしたイサの腕をつかんだのは、他でもない、リンネの細くて白い指先だった。