「……リンネ!!

いつからそこに居たんだ!?」

イサが動揺するのも無理はなかった。

リンネは一睡もしていないようで、顔色が悪い。

いつもは丁寧に手入れされている自慢のストレートヘアも、少し乱れている。

「寝てないのか?」

リンネを気遣い、イサは出来るだけ優しく話しかけた。

彼女は昔から、打たれ弱いところがある。

ガーデット城に軟禁されるようになってからは、なおさらだった。

マイの双子の妹とは思えないほど、リンネの表情や目つきはマイのものとは違う。

髪のクセ以外、パーツは同じはずなのに。

リンネはリンネなりに、裏世界の不穏な空気を感じていたのだろうか……。


リンネはそろりそろりとイサに近付き、うつむいた。

「クッキー、食べるの……?」

「リンネ……。ルークとの話、聞いてたのか?」

「ごめんなさい。

今朝、マイちゃんが居なくなったってみんなが騒いでたから、私もイサを呼びに行こうと思ってここに来たら、中から話し声がして……。

おばあちゃんも、マイちゃんを探しに街に出てるよ」

「そっか、テグレンも街にいるのか……。そうだよな」


マイが自分の実の姉だと知ってからも、リンネはマイのことをちゃん付けで呼んでいる。

テグレンのことは、「おばあちゃん」と愛情を込めて呼んでいるのに……。

イサは内心、そのことに違和感を覚えていた。